ダメ映画レビュー

愛すべきダメ映画のレビューを書いてます

イラク-狼の谷-

イスラム諸国で大ヒットを記録した過激な反米アクション映画。同盟国のアメリカ軍から突然襲撃を受けたトルコ秘密指令部。元トルコ秘密諜報員のポラットは、自殺した将校の友人に復讐を託され、仲間と共にイラクへと赴く。

 

まぁなんといいましょうか、あらすじどおりの作品です。

実はこの作品、元々はテレビドラマとして放映していたらしく、それが大人気により映画化されたのだとか。

それがドラマのダイジェスト版なのか新作なのかはわかりませんが、ストーリーの各所に米軍(というよりも、民間の警備会社のような気もするのですが。私服兵士による虐殺を制服兵士が阻止・告発しようとして射殺されるシーンなどありますし)の残虐行為シーンが挿入され、そのためにストーリーがぶつ切りになって連続性に欠けるように感じられました。

結局冒頭のシーンで米軍が捜索・押収しようとしたのは何だったのかは明かされず、最後までスルーされっぱなしで非常に座りが悪く感じられます。

 

その冒頭のトルコ司令部襲撃は2003年に実際に起こった事件なのだとか。

またアブグレイブ収容所の囚人暴行や、結婚式での祝砲を勘違い(作中では意図的)しての襲撃など、アメリカの悪行をこれでもかと織り交ぜて、悪いアメリカ!虐げられたイスラムというわかりやすい図式で盛り上げます。

さらには囚人の命を守る医師と思いきや、臓器売買のために「生きて」いること求めるユダヤ人まで登場します。

 

逆にトルコっぽいなと思ったのは自爆テロなど原理主義的な思想に走るのではなく、それがアラーの教えに背く行為だと戒めて話し合いによる解決を宗教指導者にとらせるところ。

世俗主義のトルコだからこそで、これがイランや原理主義色の強いところならば自爆テロ礼賛にいってしまうのではないかな?と思われました。

 

主人公のボラットなのですが、これがまたエリート工作員とは思えないほどお間抜け。

ホテルに仕掛けた爆薬は脅しの取引をしている間に無力化されてしまいますし、詰めが甘く先手を打たれることも多いです。

またどうみても私怨のためにイラクの一般民衆を巻き添えにしてばかり。

お前が来なけりゃ米軍に目をつけられることも無くそれなりに平和に暮らせていたのに……といったことばかりです。

 

まぁ「そういったもの」として割り切って楽しめば、出来は悪いながらも痛快な勧善懲悪アクションとして楽しめるのではないでしょうか?

 

予告